医療法人徳洲会(医徳)の東上震一理事長(一般社団法人徳洲会理事長)ら徳洲会一行は5月25日から3日間、中国山東省を訪問し、山東大学斉魯医院(病院に相当)徳州医院(2,000床)の責任者である王暁東党書記と人材交流などに関して、協力意向合意書(MOU)を締結した。徳洲会グループと同医院の医師らの交流を促進、両者間の臨床・研究・教育の場の充実につなげていく計画だ。

MOUを締結し固い握手を交わす
東上理事長(左)と王党書記
今回、訪問した徳洲会一行は東上理事長、大橋壯樹・医徳副理事長(名古屋徳洲会総合病院総長)、一般社団法人徳洲会(社徳)の植嶋敏郎・事務局長、若山俊彦・医療経営戦略室課長補佐、朱麗佳・国際部副主任の5人。
26日に同医院で心電図解析センター、画像診断センターなどを見学、王党書記や王東海院長らから同医院の役割や現状についてプレゼンを受けた。

新病院の前で
歓迎の横断幕を手に記念撮影
このなかで、同医院は70年余りの歴史があり、年間の外来患者数約152万人、入院患者数約9.4万人、総手術件数は約3.4万件で、徳州市唯一の総合病院であること、血管外科や心臓外科に力を入れていること、AI(人工知能)技術を診療に活用していること、教育活動や研究も行っていることなどを提示。また同医院の医師らと心臓外科の症例検討も行った。
その後、場所を移し、徳州市衛生健康委員会(医療機関の整備などを行う行政機関)の常樹風主任と面会、同市の医療事情などについて情報交換した。

新病院で最新型のCTを見学
午後は同医院から車で10分ほど離れた場所にある建設中の新病院(2,000床)を訪問、CT(コンピュータ断層撮影)室、ハイブリッド手術室(設置型透視装置を備えている開心術が可能な手術室)、ICU(集中治療室)、健診センターなどを視察した。
続けて徳洲会と同医院の連携に関し、座談会を実施。王党書記から新病院は急性期医療を中心に提供する予定で、敷地面積は約20万㎡、医療施設に加えて研究施設、医療技術をトレーニングする施設を建設中であることなど説明があった。また、徳洲会とは心臓外科に加えて、がん治療、脳外科、リハビリテーション、健診(検診)などの分野でも連携していきたい意向を示した。

新病院ハイブリッド手術室を見学
この後、東上理事長と王党書記は医師らの人材交流、教育や研究、学術セミナーなどでの双方の協力支援について、MOUを締結。同医院に「日本徳洲会グループ協力病院」の看板を掲げることなども確認した。大橋・副理事長は「循環器領域から交流を開始し、将来的には、がん医療など幅広い分野で交流を発展させていきます」と意欲をのぞかせていた。東上理事長は「8月にオープン予定のTokushukai International Medical Check-up Center(TIMC) OSAKAや東京・豊洲に建設予定の国際健診センターにおけるメディカルツーリズム(医療観光)の中国の窓口に、徳州医院になっていただくことを期待しています」と展望した。
症例豊富な中国での研修も視野

敷地面積約20万㎡の
新病院完成予想図
具体的な人材交流の内容は、徳洲会から手術支援ロボット「ダヴィンチ」の操作法や心臓外科、がん治療などに関するノウハウや技術を提供したり、徳洲会病院の若手医師らが症例豊富な中国で研修を受けたりすることを想定している。直近の交流としては、同医院の新病院で7月12、13日に開催される「第5回 日本-中国血管フォーラム」に徳洲会病院から医師5人が現地参加し、発表をする。また7月以降に、同医院から医師が来日、徳洲会病院で研修を受ける計画も進んでいる。

徳州医院の医師らと症例検討を実施
徳洲会と同医院の交流は2018年、同医院の王海慶医師(当時は済寧市第一人民医院医師)が名古屋病院の心臓血管外科で研修を受けたことに始まる。その後、大橋・副理事長らが中国を訪れたり、合同で同フォーラムをオンラインで開催したりしてきた。また、王党書記や王医師ら計5人が今年3月に来日し、名古屋病院、宇治徳洲会病院(京都府)、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)を視察するなど交流を深めていた。こうした積み重ねが、今回のMOU締結につながった。